🎯 結論(先に要点)
弁理士だけの年収を示す公的な統計はありません。国の賃金統計では、弁理士は弁護士・司法書士などと一緒の「法務従事者」に含まれ、その平均から計算した年収は約981万円(令和7年調査)です。年収は働き方で大きく変わり、弁理士の約25%が企業内、約49%が特許事務所・弁理士法人の勤務、約32%が経営者です(日本弁理士会)。試験の合格率は毎年6%前後(令和7年度6.4%)で、合格者の約半数は会社員です。
📋 この記事でわかること
- 弁理士の年収について、公的統計でわかること・わからないこと
- 企業内・特許事務所・独立など、働き方の割合(日本弁理士会の最新統計)
- 弁理士試験の合格率の推移と、合格者の年齢・職業
- 令和8年度の試験日程と、働きながら目指すときの考え方
弁理士は、特許・実用新案・意匠・商標の出願などを代理する、知的財産の専門家です。
「年収が高い」と言われることが多い資格ですが、根拠になる数字の出どころはさまざまです。
この記事では、厚生労働省・特許庁・日本弁理士会の公表資料だけで、弁理士の年収と試験の難易度を整理します。
予備校や転職サイトが出している年収の数字は使っていません。
弁理士の年収|公的統計でわかること
まず押さえておきたいのは、弁理士だけの年収を示す公的な統計は無いということです。
国の代表的な賃金統計である「賃金構造基本統計調査」では、令和2年に職種の区分が見直されました。
その結果、弁護士・弁理士・司法書士などは「法務従事者」という1つの職種にまとめられています。
そのため、ここで紹介できるのは「法務従事者」全体の数字です。
| 項目(法務従事者・男女計) | 令和7年調査 |
|---|---|
| 平均年齢 | 46.5歳 |
| 平均勤続年数 | 12.6年 |
| 月の労働時間 | 所定内159時間+残業4時間 |
| きまって支給する現金給与額(月) | 62万8,800円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 226万5,500円 |
| 年収の目安(月給×12+賞与) | 約981万円 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別(企業規模10人以上)。年収の目安は当サイトが「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与」で計算した値です。
注意したいのは、この数字が弁理士だけの平均ではないことです。
弁護士・司法書士なども含んだ平均で、しかも会社などに雇われている人の統計です。
特許事務所を経営する弁理士の収入は、この統計には含まれていません。
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年収は働き方で大きく変わる|弁理士の約3割は経営者
弁理士の年収を考えるうえでは、どんな働き方をしている人が多いかを知ることが大切です。
日本弁理士会は、会員の主な事務所の種類を毎月公表しています。

| 主たる事務所 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 企業(企業内弁理士) | 2,998人 | 25.2% |
| 特許事務所の経営 | 2,904人 | 24.4% |
| 弁理士法人に勤務 | 2,492人 | 20.9% |
| 特許事務所に勤務 | 1,680人 | 14.1% |
| 弁理士法人の経営 | 913人 | 7.7% |
出典:日本弁理士会「会員分布状況」(2026年8月31日現在・弁理士11,897人)
特許事務所や弁理士法人を経営している人は、合わせて約32%です。
経営者の収入は、事務所の売上や規模で大きく変わります。
同じ統計では、弁理士1人の事務所が全事務所の73.0%を占めています。
一方、企業内弁理士は会社の給与体系で年収が決まります。
特許事務所・弁理士法人の勤務は、事務所ごとの給与体系や担当する案件の量で変わります。
公的な統計には、働き方別の年収はありません。
「弁理士の平均年収は○○万円」という数字を見たときは、どの統計の、どの働き方の数字なのかを確かめましょう。
働き方ごとに「年収が何で決まるか」
| 働き方 | 年収が決まる主な要素 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 企業内弁理士 | 勤め先の給与体系・役職。資格手当がある会社もある | 今の会社の知財部門で専門性を高めたい人 |
| 特許事務所・弁理士法人に勤務 | 事務所の給与体系、担当する案件の量と難しさ | 明細書の作成など実務の経験を積みたい人 |
| 経営(独立) | 事務所の売上から経費を引いた利益。顧客の数と単価 | 営業や経営も含めて自分で事業を回したい人 |
同じ弁理士でも、年収を決める仕組みがまったく違うことがわかります。
どの働き方を目指すかによって、資格を取った後の収入の見通しも変わります。
年収の数字を見るときのチェックリスト
- どの統計・調査の数字か(国の統計か、企業の独自調査か)
- 弁理士だけの数字か、ほかの職業を含んだ数字か
- 雇われている人だけの数字か、経営者を含むか
- 平均値か中央値か(少数の高収入の人がいると平均は上がりやすい)
- いつの時点の数字か
この5点を確かめると、数字の意味を取り違えずに済みます。
日本弁理士会のデータで見る弁理士の姿
| 項目 | 内容(2026年8月31日現在) |
|---|---|
| 会員数 | 12,358(弁理士11,897人+弁理士法人461) |
| 平均年齢 | 54.51歳(最多は50〜55歳の20.3%) |
| 男女 | 男性81.9%・女性18.1% |
| 出身 | 理系76.7%・文系18.3% |
| 資格の取り方 | 試験92.2%・弁護士4.2% |
| 地域 | 東京都54.3%・大阪府14.9% |
弁理士の半数以上が東京都に事務所を置いています。
理系出身が約8割ですが、文系出身の弁理士も約2割います。
弁理士試験の難易度|合格率は毎年6%前後
弁理士になるには、原則として弁理士試験に合格する必要があります。
特許庁の公表では、最終合格率は毎年6%前後で推移しています。

| 年度 | 志願者 | 受験者 | 最終合格者 | 合格率 | 合格者の平均受験回数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和4年度 | 3,558人 | 3,177人 | 193人 | 6.1% | 3.4回 |
| 令和5年度 | 3,417人 | 3,065人 | 188人 | 6.1% | 2.8回 |
| 令和6年度 | 3,502人 | 3,160人 | 191人 | 6.0% | 2.4回 |
| 令和7年度 | 3,501人 | 3,183人 | 205人 | 6.4% | 2.9回 |
出典:特許庁「令和7年度弁理士試験の結果について」「令和6年度」「令和5年度」(令和4年度は令和5年度資料の前年度欄)。合格率は合格者÷受験者。
受験者のおよそ16人に1人しか合格しない計算です。
合格者の平均受験回数は2.4〜3.4回で、1回で合格する人ばかりではないことがわかります。
数年がかりで計画的に取り組む試験だと考えておきましょう。
どんな人が合格している?|令和7年度の合格者205人

| 区分 | 内訳(人数・割合) |
|---|---|
| 年代 | 20代71人(34.6%)・30代89人(43.4%)・40代29人(14.1%)・50代14人(6.8%)・60代2人(1.0%) |
| 職業 | 会社員101人(49.3%)・特許事務所61人(29.8%)・公務員11人(5.4%)・無職9人(4.4%)・学生9人(4.4%)ほか |
| 出身系統 | 理工系168人(82.0%)・法文系27人(13.2%)・その他10人(4.9%) |
| 男女 | 男性145人(70.7%)・女性60人(29.3%) |
出典:特許庁「令和7年度弁理士試験の結果について」合格者内訳
合格者の約半数は会社員です。
特許事務所で働きながら合格した人を合わせると、約8割が仕事を続けながら合格していることになります。
年代では、20代と30代で約8割を占めます。
ただし、40代以上の合格者も約2割いて、年齢だけで諦める必要はありません。
法文系の合格者も27人いて、文系からでも合格できる試験です。
弁理士試験の仕組みと令和8年度の日程
弁理士試験は、短答式筆記試験・論文式筆記試験・口述試験の3段階です。
前の段階に合格した人だけが、次の段階に進めます。
| 段階 | 令和8年度の試験日 | 合格発表(予定) |
|---|---|---|
| 短答式筆記試験 | 5月17日(日) | 6月8日(月) |
| 論文式筆記試験 | 必須科目6月28日(日)・選択科目7月26日(日) | 9月18日(金) |
| 口述試験 | 10月17日(土)〜19日(月)のいずれか1日 | 最終合格発表 11月9日(月) |
出典:特許庁「令和8年度弁理士試験公告」。合格発表日は予定です。最新の情報は特許庁の公式サイトで確認してください。
免除制度がある
弁理士試験には、一度合格した段階を一定期間免除する制度があります。
- 短答式に合格すると、合格発表の日から2年間、短答式が免除される
- 論文式の必須科目に合格すると、同じく2年間、必須科目が免除される
- 大学院の修士・博士や一定の資格を持つ人は、論文式の選択科目が免除される場合がある
令和7年度の合格者205人のうち、191人(93.2%)が何らかの免除を受けていました(特許庁の合格者内訳)。
多くの合格者が、段階ごとに合格を積み上げて最終合格にたどり着いていることがわかります。
合格してから弁理士として働くまで
弁理士試験に合格しても、すぐに弁理士として仕事ができるわけではありません。
弁理士として登録するには、合格後に「実務修習」を修了する必要があります。
実務修習を終えたうえで日本弁理士会に登録して、はじめて弁理士として業務ができます。
- 弁理士試験に最終合格する
- 実務修習を受けて修了する
- 日本弁理士会に登録する
- 企業・特許事務所などで弁理士として働く、または独立する
会社員のまま合格し、今の会社の知財部門で企業内弁理士として登録する人もいます。
日本弁理士会の統計で、企業を主たる事務所とする弁理士が約25%いるのはそのためです。
勉強時間はどれくらい?
合格に必要な勉強時間について、特許庁や日本弁理士会の公的な資料はありません。
よく見かける「○○時間」という数字は、予備校などが示している目安です。
公的な数字で目安になるのは、合格者の平均受験回数(令和7年度2.9回)です。
働きながら目指す場合は、2〜3年の計画で、短答式→論文式と段階的に合格を積み上げるのが現実的です。
働きながら弁理士を目指すなら
合格者の約半数が会社員であることからも、働きながらの合格は十分に可能です。
ただし、短答・論文・口述の3段階を独学だけで対策するのは負担が大きくなりがちです。
特に論文式は、書いた答案の添削を受けられるかどうかで、学習の効率が変わります。
通勤時間などのすき間時間を使える通信講座は、会社員の受験生にとって選択肢の1つです。
弁理士の年収・難易度についてよくある質問
Q. 弁理士の平均年収はいくらですか?
弁理士だけの年収を示す公的な統計はありません。
国の賃金構造基本統計調査では、弁理士は弁護士・司法書士などと一緒の「法務従事者」に含まれ、令和7年調査の数値から計算した年収の目安は約981万円です。
Q. 弁理士は独立すると稼げますか?
独立後の収入は、事務所の売上次第で大きく変わります。
日本弁理士会の統計では、特許事務所・弁理士法人の経営者は約32%で、弁理士1人の事務所が全事務所の73.0%を占めています。
Q. 弁理士試験の合格率は?
最終合格率は毎年6%前後です。
令和7年度は受験者3,183人に対して合格者205人で、合格率は6.4%でした。
Q. 文系でも弁理士になれますか?
なれます。
令和7年度の合格者のうち法文系は27人(13.2%)で、日本弁理士会の会員の18.3%が文系出身です。
Q. 令和8年度の最終合格発表はいつですか?
特許庁の試験公告では、令和8年11月9日(月)の予定です。
口述試験は10月17日〜19日のいずれか1日に行われます。
まとめ|年収の数字は「どの統計か」を確かめる
弁理士だけの年収を示す公的な統計はなく、国の統計の「法務従事者」の平均から計算すると約981万円です。
弁理士の約25%が企業内、約49%が特許事務所・弁理士法人の勤務、約32%が経営者で、年収は働き方で大きく変わります。
試験の合格率は毎年6%前後と難関ですが、合格者の約半数は会社員です。
数年がかりの計画を立てて、段階的に合格を積み上げていきましょう。


